退職金は受け取る個人の側の税金面で非常に優遇されています。
しかも、
しかも役員の退職予定時期に合わせて計画的に所得金額を調整できれば、会社側でも大きな節税が狙えます。
- 会社のメリット
- 退職する役員のメリット
- 役員退職金を利用した会社の節税プラン
会社のメリット
適正な金額の範囲内であれば、役員退職金の額は、会社の費用(損金)にすることができます。
つまり、所得に課税する税金である法人税等の金額を減らすことができます。
単純ですが、役員退職金はその金額が非常に大きい場合があるため、与えるインパクトは大きくなります。
もし、役員退職金を計上した結果、赤字決算になってしまった場合には、繰越欠損金として繰り越して翌期以降の所得と相殺できます。
退職する役員のメリット
退職金は、長年の勤労に報いるという側面と、勇退後の生活資金に充てられるという側面を合わせ持つため、税負担が少なくなるよう非常に優遇されています。
退職金を受け取った個人に課される所得税額等を計算する元となる金額(=退職所得の金額)は、次のように計算されます。
(収入金額-退職所得控除額)×1/2
※ただし、勤続年数が5年以下の場合には、1/2を掛けません。
上記の算式に出てくる退職所得控除額は、勤続年数により次のように計算します。
勤続年数20年以下の場合・・・・・・40万円×勤続年数(1年未満の端数は切り上げ、以下同じ)
勤続年数が20年を超える場合・・・・70万円×(勤続年数-20年)+800万円
つまり、退職金の額が退職所得控除額を超えていなければ、そもそも課税されませんし、超える場合でも、大きな退職所得控除額を引いた後、さらに2分の1にできる(5年超勤務した場合)のです。
さらに、退職所得は「分離課税」といって、他の所得と合算せずに税額を計算することになっています。日本の所得税は、基本的には累進課税という、所得金額が高いほど高い税率が適用される仕組みになっています。分離課税であれば、他の所得がある場合でも合算して高い税率になることもないため、税率面でも優遇されています。
つまり、
- 多額の退職所得控除を引ける
- 所得を2分の1にできる
- 他の所得と合算せずに税率を適用する
という3つの点で、退職金は税負担がとても優遇されており、同じ額を役員報酬などで支払うよりも、手取り額が多くなります。
役員退職金を利用した会社の節税プラン
上記のように、受け取る個人の側の税金が非常に優遇されている退職金ですが、役員の退職予定時期に合わせて計画的に会社の所得発生金額を調整できれば、会社側でも大きな節税が狙えます。
例えば、生命保険などの、当期の所得を減らして翌期以降に所得を繰り延べる(所得の発生時期を遅らせる)節税商品と組み合わせる手法があります。
生命保険で節税する場合、保険料を支払っている事業年度においては、保険料の半額程度を損金に算入することで法人税等の額を減らします。
いずれ保険を解約すると解約返戻金として資金が戻ってきますが、同時に益金(利益)も発生するので、そのままでは解約返戻金に法人税等が課税されてしまいます。そこで、保険の解約と退職金の支払いを同一事業年度中に行うことで、解約による益金を退職金で相殺し、税額の発生を抑えることができます。