一般社団法人の役員である理事や代表理事は、どのような手続きで選ぶことになるでしょうか。
一般社団法人をこれから設立される方の中にも、選任の方法については多少迷われる方もいらっしゃいます。
基本的な部分を以下で説明していきますので、要点を押さえていきましょう。
一般社団法人の理事の選任
一般社団法人の理事は、社員総会の普通決議によって選任することになります。ここで必要なのは「普通決議」ですから、一般社団法人のごく一般的な事項を決めるときと同じ決議方法になります。
より正確には、「社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席した当該社員の議決権の過半数」で決することになります。
ここでの「社員」はもちろん、株式会社でいうところの従業員(サラリーマン)のことではなく、一般社団法人の構成員(議決権を有するメンバー)の意味です。株式会社でいえば株主の地位がこれに近い存在です。
議決権の過半数を有する社員の出席が決議の前提となりますから、一般的な1人1議決権の一般社団法人であれば、半数のメンバーが集まって決議を行えば前提の要件はクリアとなります。
そして、その決議においては「議決権の過半数」で理事を選任すればよいので、より簡単にイメージしやすく説明するなら「半分かそれ以上のメンバーが決議に参加して、その中の半分かそれ以上のメンバーが決めた理事が一般社団法人の理事になる」ということになります。
半分の半分ですから、だいたい1/4以上の賛成があれば、最低限、理事として選ぶことができるわけです。意外と少ないと思われた方も多いのではないでしょうか。
定款で決議要件を厳しくすることができる
この一般社団法人における決議の要件を緩くすることはできませんが、厳しくすることは可能です。ただし、決議要件を一般決議以外に変える場合は、定款へしっかり記載しておく必要があります。
そのため、もし一般社団法人を設立するときに理事の選任を厳しくしておきたいというときは、設立時の定款にその旨を条文として記載しておくことになります。
一般社団法人の代表理事の選定
一方、その一般社団法人の代表権を持つ代表理事を選定する場合(細かいところですが、理事を選ぶときは「選任」、その中から代表権のある代表理事を選ぶときには「選定」の言葉を使います)、こちらはその一般社団法人に理事会を設置するかしないかによって、選定の要件が異なってきます。
理事会を設置しないとき
一般社団法人に理事会を設置しないとき(設立当初の一般社団法人は規模が小さいことが多いため、理事会を設置しないケースが多いです)は、原則として理事それぞれが代表権を持つ代表理事となります。
たとえば2名の理事が存在する一般社団法人では、その2名の理事とも代表権を持つことになります。
このような理事全員に代表権のある状態がまずいときは、一般社団法人設立時の定款で、直接に「代表理事は誰々とする」と決めたり、社員総会の決議によって決めるなど、いくつかの方法の中から代表理事の選定方法を規定しておく必要があります。
あえて代表理事を複数置くこともありますが、これから一般社団法人を設立するという段階では、誰がリーダーとなって活動していくのか、対内的にも対外的にも分かりやすいように代表者を1人に絞ることも多いです。
理事会を設置するとき
次に、一般社団法人に理事会を設置するときは、理事の中から代表理事を選定するのは理事会の権限となります。
これは法律上の要請ですから、理事会を設置する一般社団法人の定款に「代表理事は社員総会で選定する」といった規定を置くことはできません。
理事の任期
以上が、理事と代表理事を決める原則と例外的な手続き方法になります。
なお、選ばれた理事の任期ですが、こちらは「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで」となっていますから、概ね、2年の間になります。
任期が2年あると長すぎて都合が悪いという場合は、その一般社団法人の定款に条文を用意すれば短縮可能です。
ちなみに一般社団法人設立にあたっては「理事の任期を10年に伸ばしたい」などのご相談を頂くこともありますが、理事の任期は短縮することは認められても伸ばすことは認められていませんので、譲渡制限株式会社などのように任期をかなり長く設定することはできない決まりになっています。