株式会社を設立して新たに業務を始めるときは、株式会社の設立手続きのほかに、会社が設立された後で行政庁などから許可や免許を受けるための申請手続きを要することがあります。
許可や免許の申請手続きが必要になる業種を始めるときは、これらの手続きに手間や時間をかけすぎないように、事前の準備や確認が大事になってきます。
許可や免許が必要な業種であるにもかかわらず、許可・免許を得ずに営業を開始してしまうと、刑事罰や罰金などが科せられてしまうこともあります。新規事業の開業においては、許可・免許取得の要否は十分に確認を行いましょう。
営業の許可や免許が必要となる業種
では、株式会社という法人格を作ったあと、営業を始めるために許可や免許が必要になる業種というのは、どのようなものなのでしょうか。典型的な業種を、以下で見ていきたいと思います。
建設業
内装工事業やとび・土工、管工事や大工工事など、建設業を営むためには建設業の許可が必要になります(ただし、建設業の許可は法令で定められた一定以上の金額の工事を請け負う場合に必要となる許可であるため、それ以下で小規模に事業を営む場合には許可を得ずとも営業が可能です)。
建設業を行う会社を設立される場合、「建設業許可が必要」という知識は既に持っておられる建設業者さんがほとんどだと思います。大きな工事の契約が入りそうなので、慌てて建設業許可を取得して、そこから事業を法人化(株式会社設立)と動いてしまうと、個人の許可ではなく会社の許可を取り直さなければならなくなってしまいます。
個人事業の建設業者さまが許可を取ろうとするときは、法人化も視野に入れて、できれば行政書士だけでなく税理士にも相談しておくと安心です。
宅建業(不動産業)
不動産の売買や賃貸業を行うためには、事務所を設置する都道府県知事から宅建業免許を受けておく必要があります。不動産業者さんの場合も、建設業者さんと同様、既に業務の知識として宅建業免許が必要であることは知っている方がほとんどだと思いますが、宅地建物取引士の手続きと宅建業免許の手続き、そして株式会社設立の手続きに加えてハトマークやウサギマークなど保証協会への入会手続きも重なってきますから、起業の際のスケジューリングが重要です。
旅行業
旅行業を営む株式会社を設立した場合も、行政庁から許可を受けなければ営業ができません。
資産の要件などが絡んでくるため、できれば株式会社を設立する前に、旅行業許可の種別や要件をしっかり押さえておきたいところです。
飲食業
株式会社の形態で飲食店を営む場合には、保健所から飲食店営業の許可を取得しておく必要があります。飲食店の営業許可はもっともメジャーな許可の一つですから、ご存じの方も多いかもしれません。
店舗として利用する物件の要件などが細かく指定されるため、物件契約の前にしっかりと許可基準を満たすか確認しておきましょう。
古物商(中古品売買や輸出業)
中古品を買ったり売ったり、買い取った中古品をレンタルしたり輸出したりする事業を行う株式会社を設立した場合、営業を開始する前に公安委員会(窓口は警察署)から古物商許可証を発行してもらう必要があります。
申請自体はそれほど難しくはありませんが、平日に管轄警察署の担当者と時間を調整して相談や申請をすることは意外と手間がかかるケースも多く、また許可証が発行されるまでしばらく日数もかかることから、中古品の売買・輸出業を行う場合には早めの準備が肝心です。
産業廃棄物収集運搬業
産業廃棄物を収集・運搬する場合は、営業前に都道府県の許可を受けておく必要があります。産廃収集運搬業の許可で気をつけなければならないのは、産廃を収集する場所だけでなく、それを運んでいく先の場所の都道府県知事の許可も必要となる点です。収集場所が複数、運ぶ場所も複数となると、多くの都道府県に対して許可の申請手続きを行わなければならないため、手間がかかります。
また、稀に一般家庭から出るゴミや不要品を回収する事業を行うために産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しようとする事業者さんもいらっしゃいますが、一般家庭から出るゴミ・不要品の回収に必要なのは一般廃棄物の許可になります。こちらの許可は非常に取得が難しく、会社を作ってすぐ事業を行うというわけにはいかないケースがほとんどになりますので、株式会社設立前段階からしっかり確認しておくことが大事になります。
酒類の販売
お酒の販売や輸出入などを行う事業では、酒類販売業免許が必要になります。こちらは税務署が窓口になりますが、何のお酒をどのような業態で取り扱うかによって、必要な免許が変わってきます。
介護事業・福祉事業
介護事業を始めようとする人は昨今増えてきていますが、この業種も、あらかじめ行政庁から許可を得る必要があります。
利用する物件(施設)の要件に留まらず、人的、財産的な要件なども細かく規定されていること、事業を始めようとする地域の自治体によって独自の運用ルールが定められていることなどから、介護事業を始めようとする場合は予め専門家などに相談しておくほうが無難です。
人材派遣業
人材派遣業を事業として行う株式会社を設立した場合、都道府県の労働局に申請して予め許可を受けておく必要があります。
株式会社設立と合わせて許可の要否や要件の確認を
ここでは主な営業許可について触れましたが、これ以外にも営業を始めるためには予め会社として許可や免許を受けておかなければならない業種・業態が多数あります。営業を始めてから「許可が必要だったとは知らなかった」では済まされませんし、下手な申請を進めてしまったことで無駄な日数やコストがかかってしまうこともよくあります。
株式会社を設立して新たな事業を始める際には、行政書士や税理士など専門職に一度相談してみるのも一つの手です。