合同会社設立では、会社の本店所在地をどこにするか決めなければなりません。
合同会社のルールが定められている会社法上、本店の所在をどこに置かなければならないかという制約はありません。しかし、だからといって好きな場所を適当に決めてしまえばよいというわけでもありません。
本店を決めることで、合同会社設立後に生じる問題はいろいろ考えられますが、よくあるパターンとしては以下4つの問題を挙げることができます。
これから合同会社の設立をお考えの方は、予定する本店所在地でこれらの問題が生じることがないか、念のため確認してみてください。
賃貸借契約などの問題
まず第一の問題は、会社法以外の法律や契約によって、会社の本店を設置することが認められていない物件が多いこと。
「オフィスを借りるのは事業が軌道に乗ってから。会社設立時はひとまず、住んでいるところを本店にしよう」
そう考えても、通常、住んでいる部屋は居住用として借りている物件のはずです。賃貸借契約上、居住のみに使用することが義務づけられていることがほとんどですから、会社設立の際に本店所在地として住んでいる部屋を活用することは困難です。
念のため、不動産屋さんや家主さんに確認を取ってみてもよいかもしれませんが、よほど普段から付き合いのある大家さんであるケースを除いて、大抵は一蹴されてしまうでしょう。
郵便物などが本店宛に届く問題
会社設立後は、会社本店として登記した場所に宛てて郵便物が送付されることも多くなります。そのため、たとえば住んでいる場所に本店を置くことができないので、ひとまず実家を本店にしておいたという場合、その実家に届く郵便物を回収できるかどうかという問題も考慮しておくほうがよいでしょう。
単なるダイレクトメールなら捨ててしまえばよいですが、何かしなければならない期限が告知されている郵便物が届いたとき、それを期限後にしか確認できない状況では、いろいろと不都合が生じていまうかもしれません。また実家を本店所在地として郵便物が届く場合、重要な郵便物だとは思わなかったという理由から、実家に住む親などが郵便物を捨ててしまって問題になるケースもあるようです。
銀行口座開設など契約上の問題
住んでいる場所に登記することは禁止されていて、また実家を本店とすることにも不都合がある場合、本店所在地として検討・活用されることが多いのがレンタルオフィスやバーチャルオフィスです。
通常、物理的な部屋やブースも含めて契約する内容であれば「レンタルオフィス」、物理的な部屋やブースは用意されず本店所在地としてのみ利用できるのが「バーチャルオフィス」といわれます。
これらのレンタルオフィス等は、会社の本店所在地として手軽に利用しやすいメリットがありますが、デメリットも存在します。
よく起こりがちのデメリットとしては、会社設立後の銀行口座開設です。新しく設立された会社に対して口座を作ることには、銀行は消極的です。たとえばレンタルオフィスの所在地が以前に詐欺会社の本店所在地としても使われていた場合、同じ本店所在地にある会社には口座を開設させないという判断をとる金融機関も多いようです。
また、銀行や支店によっては、担当者が直接にオフィスを現地確認してから、銀行口座の開設を進めるケースも見受けられます。ちゃんと部屋を借りる形式のレンタルオフィスならまだ問題は少ないかもしれませんが、全く部屋のないバーチャルオフィスでは、現地確認さえままならず口座開設が進まないという事態も考えられます。
営業許可の要件の問題
合同会社を設立した後、取り扱うことになる業務に、営業許可などは必要でしょうか。もし行政に許可や免許の申請が必要になる業務を行う予定であれば、その許可手続きにおいて本店にどのような要件が求められるのか、あらかじめ確認しておくほうが無難です。
仮に上記のような契約上、郵便物の配達上、銀行口座開設上の問題が発生しなくても、その物件に本店を設置することによって営業許可が下りないという事態に陥ってしまうと、意味がありません。
たとえば、合同会社として不動産業を始めるというケースでは、本店にしっかりとした独立性が求められます。バーチャルオフィスでは不可能ですし、ブース型のパーティションで簡単に区切られた形式のレンタルオフィスでも営業する許可は下りません。
「契約手数料などを含めてそれなりのコストをかけて綺麗なレンタルオフィスを契約したのに、営業をするための許可の要件を満たさなかった……」
そんなことにならないように、これから合同会社の本店所在地を決める場合には、営業する段階での問題点などもあらかじめ検討しておきましょう。